・コイントス手法って何?
・コイントス手法って勝てるの?
こんな悩みを解決します。
結論:コイントス手法は上振れを引かなければ勝つのは難しい
FXについて調べていると「手法は何でもよくて極端な話コイントスでも勝てる!」
というようなことを目にすることがあると思います。
普通に考えて売り買いをコイントスで決めても勝てさそうですよね?
しかし実際に検証しているサイトは少ないです。
なので今回はEAを作成し、コイントス手法が勝てるのかどうか検証していきます。
なお、その他の検証・解説記事については以下よりまとめています。
- そもそも「コイントス手法」とは
- トムバッソのコイントス手法の検証環境と検証するルール
- トムバッソのコイントス手法の検証
- FXでコイントス手法は勝てる?トムバッソのコイントス手法を徹底検証:まとめ
そもそも「コイントス手法」とは
コイントス手法とはその名の通りコイントスで売りか買いを決めてエントリーを行う手法です。
このコイントス手法で最も有名なのが、
かの有名なマーケットの魔術師、タートルズの1人であるトム・バッソが考案した手法です。
トム・バッソのコイントス手法
トム・バッソのコイントス手法は海外では「トム・バッソのコイントス証明」と言われるインタビュー内で出てきます。
このインタビューの内容を「新マーケットの魔術師―米トップトレーダーたちが語る成功の秘密」より引用します。
トムバッソの公演においてある受講者が以下のような質問をした。
「まるであなたの話を聞いていると手仕舞いとポジションサイジング(資金に対する建て玉の枚数)だけが重要で、それさえ正しければコインの表か裏かでロングかショートを決めても利益が出せるというように聞こえます。」
トムはおそらく「そうだ」と答えた。さっそく彼はオフィスに戻ると先物取引の10の市場で実験を開始した。売りか買いかはコインを投げて決めた。
その後10日間平均のATR(真実の値幅)の3倍のストップを入れた。そして1回取引あたりの損失は資金の1%になるよう枚数を調整した。
これだけである。しかしストップの位置は自分の有利な方向へ変化させた。つまり自分の有利な方向へ相場が動いたとき、あるいは日々のボライティリティが狭まっているときに機械的に動かされた。(3倍のボライティリティストップをトレイリングストップとして使用しているということ)
結果はスリッページや手数料分を差し引いても安定した利益を得られるというものだった。これはかなり感動的だ。システムには単純さが何より重要だということを証明する結果となった。
(引用元:新マーケットの魔術師―米トップトレーダーたちが語る成功の秘密)
以下に引用元の書籍へのリンクを載せておきます。
この手法をまとめると以下のようになります。
- コイントスの裏表で売りか買いを決定
- 損失が資金の1%になるようにポジションサイズを決定
- 期間10のATRの3倍をストップとして、トレーリングストップする
このようなエントリー方法でもポジションサイジングと資金管理ができていればトータルで勝てると言っています。
驚くほど単純で、エントリーに関してはトレンドフォローもなにもないランダムエントリーです。
本当にこの手法で勝てるのでしょうか。
トムバッソのコイントス手法の検証環境と検証するルール
検証環境は以下の通りです。
項目 | 説明 |
MT4 | Axiory MetaTrader4 Version 4.00 build 1340 |
ヒストリカルデータ取得元 | デューカスコピージャパン |
通貨ペア | USDJPY |
テスト期間 | 2004年1月1日~2020年12月31日 |
テストモード | 始値のみ(※1) |
スプレッド | 固定:3pips |
時間軸 | 日足 |
証拠金通貨 | USD(米ドル) |
初期証拠金 | 10,000USD |
※1 EAの仕様上、ローソク足確定時に四つ値を参照するだけなので始値のみにしています。
また、テスト用EAのルールは以下の通りです。
- 二分の一の確率でランダムに売りか買いを行う
- ポジションを保持している間は新たにポジションは建てない
- 1回のトレードの損失はトレード資金の1%に設定
- エントリー時のATR(期間10)の3倍をストップとして設定する
- 終値がエントリー方向に動いた場合のみ、③のストップをエントリー方向に動かす
ロットサイズは③と④から、エントリー時のATR(期間10)の3倍で損切りにかかった場合、
その損失がトレード資金の1%になるように計算して決定するようになっています。
トムバッソのコイントス手法の検証
それでは実際に検証していきますが、以下のような手順で行います。
- 単純なコイントス手法の検証
- トムバッソのコイントス手法の検証
単純なコイントス手法の検証はトムバッソの手法と比較するために行います。
この手法はトムバッソの手法からトレーリングストップを除き、ストップと同じ値幅で利確を行う手法です。
つまりトムバッソの手法と①~④は共通で、利確だけリスクリワード比1対1で行います。
この手法ではランダムウォーク理論に乗っ取るのであれば、偏らない限りトントンで終わるはずです。
この手法とトムバッソの手法を比較し、トムバッソの手法の方がより良い成績を残せているのであれば、
それは優位性があるということになります。
なお、完全にランダムエントリーとなるため、偏りの影響を少しでも軽減するためにそれぞれの手法で各10回ずつ同設定でテストを行い、その平均を使用して比較を行います。
単純なコイントス手法の検証
単純なコイントス手法の検証結果は以下の通りとなります。
No | 平均 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
純益 | -200.799 | -1500.59 | -2050.72 | 1463.61 | 669.26 | -777.56 | 168.33 | 73.96 | -404.81 | 537.53 | -187 |
総利益 | 7687.566 | 6669.08 | 6186.44 | 9367.73 | 8348.99 | 7064.57 | 7974.65 | 8011.11 | 7152.18 | 8456.95 | 7643.96 |
総損失 | -7888.367 | -8169.67 | -8237.16 | -7904.12 | -7679.74 | -7842.14 | -7806.32 | -7937.15 | -7556.99 | -7919.42 | -7830.96 |
プロフィットファクタ | 0.978 | 0.82 | 0.75 | 1.19 | 1.09 | 0.9 | 1.02 | 1.01 | 0.95 | 1.07 | 0.98 |
期待利得 | -1.27 | -9.5 | -12.98 | 9.26 | 4.24 | -4.92 | 1.07 | 0.47 | -2.56 | 3.4 | -1.18 |
絶対ドローダウン | 938.634 | 1724.74 | 2113.48 | 15.11 | 744.22 | 1010.6 | 547.38 | 656.64 | 1440.33 | 380.02 | 753.82 |
最大ドローダウン | 1447.978 | 2118.45 | 2331.76 | 1054.98 | 1477.78 | 1343.42 | 1213.15 | 1353.32 | 1462.52 | 956.21 | 1168.19 |
相対ドローダウン | 14% | 20% | 23% | 9% | 14% | 13% | 11% | 12% | 15% | 9% | 11% |
総取引数 | 158 | 158 | 158 | 158 | 158 | 158 | 158 | 158 | 158 | 158 | 158 |
売りポジション数 | 77.4 | 85 | 87 | 78 | 80 | 77 | 74 | 77 | 69 | 77 | 70 |
買いポジション数 | 80.6 | 73 | 71 | 80 | 78 | 81 | 84 | 81 | 89 | 81 | 88 |
売りポジション 勝率(%) | 54% | 49% | 47% | 59% | 56% | 52% | 55% | 55% | 54% | 56% | 54% |
買いポジション 勝率(%) | 51% | 47% | 44% | 56% | 54% | 49% | 52% | 52% | 51% | 53% | 51% |
勝トレード数 | 82.6 | 76 | 72 | 91 | 87 | 80 | 85 | 84 | 82 | 86 | 83 |
負トレード数 | 75.4 | 82 | 86 | 67 | 71 | 78 | 73 | 74 | 76 | 72 | 75 |
勝率(%) | 52% | 48% | 46% | 58% | 55% | 51% | 54% | 53% | 52% | 54% | 53% |
負率 (%) | 48% | 52% | 54% | 42% | 45% | 49% | 46% | 47% | 48% | 46% | 47% |
最大 勝トレード金額 | 117.149 | 119.36 | 110.34 | 125.35 | 119.36 | 108.03 | 117.46 | 114.6 | 112.8 | 122.49 | 121.7 |
最大 敗トレード金額 | -138.635 | -127.36 | -131.17 | -152.01 | -137.85 | -122.99 | -149.61 | -131.81 | -149.61 | -152.01 | -131.93 |
平均 勝トレード金額 | 92.774 | 87.75 | 85.92 | 102.94 | 95.97 | 88.31 | 93.82 | 95.37 | 87.22 | 98.34 | 92.1 |
平均 敗トレード金額 | -105.012 | -99.63 | -95.78 | -117.97 | -108.17 | -100.54 | -106.94 | -107.26 | -99.43 | -109.99 | -104.41 |
最大 連勝トレード数 | 6.7 | 6 | 7 | 7 | 6 | 5 | 7 | 8 | 8 | 8 | 5 |
最大 連敗トレード数 | 5.8 | 6 | 6 | 6 | 5 | 4 | 7 | 6 | 7 | 6 | 5 |
最大 連勝金額 | 639.287 | 586.28 | 570.79 | 768.83 | 589.76 | 467.5 | 668.46 | 743.78 | 794.5 | 744.43 | 458.54 |
最大 連敗金額 | -597.826 | -584.1 | -529.85 | -723.08 | -474.29 | -395.41 | -727.86 | -653.88 | -705.09 | -682.93 | -501.77 |
平均連勝 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 |
平均連敗 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 |
上記の表を見るとわかるように今回は勝率において少し上振れた結果になっています。
しかし、勝率が52%なのにプロフィットファクタが1を下回る結果になっています。
これはおそらくロット数を損失が資金の1%になるように決定したためだと思います。
このロット数の算出方法だと、資金があるうちに多く負けた場合、資金がなくなってからの勝ちでは負け分を取り戻すことができないからです。
また、平均勝トレード金額を見ると平均敗トレード金額を下回っていることがわかります。
これはスプレッドの影響と先述のロット数算出方法の影響だと思います。
ただ平均全体でみた場合、総利益-200ドルということなので、最終的には資金に対して-2%の利益でした。
よって、ほぼトントンで終わったといってもいいと思います。
トムバッソのコイントス手法の検証
次はトムバッソのコイントス手法の検証結果を見てみます。
検証結果は以下の通りです。
No | 平均 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
純益 | -1278.901 | -1412.11 | 505.66 | -179.19 | 141.26 | -1094.49 | -2842.49 | -2192.39 | -913.15 | -1047.18 | -3754.93 |
総利益 | 8840.075 | 9499.44 | 10769.29 | 10089.95 | 10770.19 | 8598.05 | 7637.59 | 7464.76 | 8874.89 | 8618.41 | 6078.18 |
総損失 | -10118.975 | -10911.54 | -10263.63 | -10269.14 | -10628.93 | -9692.54 | -10480.09 | -9657.14 | -9788.04 | -9665.59 | -9833.11 |
プロフィットファクタ | 0.872 | 0.87 | 1.05 | 0.98 | 1.01 | 0.89 | 0.73 | 0.77 | 0.91 | 0.89 | 0.62 |
期待利得 | -3.711 | -3.87 | 1.5 | -0.53 | 0.42 | -3.44 | -8.46 | -6.47 | -2.76 | -3.18 | -10.32 |
絶対ドローダウン | 1484.503 | 1470.07 | 437.36 | 420.49 | 111.89 | 1130.18 | 2845.64 | 2256.71 | 955.93 | 1282.34 | 3934.42 |
最大ドローダウン | 2302.177 | 2238.15 | 1273.04 | 1559.62 | 1754.47 | 1373.63 | 4419.61 | 2383.09 | 2134.21 | 1751.5 | 4134.45 |
相対ドローダウン | 21% | 21% | 11% | 14% | 15% | 13% | 38% | 24% | 19% | 17% | 41% |
総取引数 | 339.3 | 365 | 337 | 335 | 339 | 318 | 336 | 339 | 331 | 329 | 364 |
売りポジション数 | 171.8 | 170 | 173 | 185 | 166 | 167 | 172 | 152 | 174 | 173 | 186 |
買いポジション数 | 167.5 | 195 | 164 | 150 | 173 | 151 | 164 | 187 | 157 | 156 | 178 |
売りポジション 勝率(%) | 40% | 40% | 42% | 44% | 46% | 40% | 33% | 38% | 37% | 42% | 35% |
買いポジション 勝率(%) | 38% | 38% | 42% | 38% | 42% | 36% | 35% | 37% | 39% | 39% | 34% |
勝トレード数 | 132 | 142 | 141 | 139 | 150 | 122 | 114 | 127 | 126 | 133 | 126 |
負トレード数 | 207.3 | 223 | 196 | 196 | 189 | 196 | 222 | 212 | 205 | 196 | 238 |
勝率(%) | 39% | 39% | 42% | 41% | 44% | 38% | 34% | 37% | 38% | 40% | 35% |
負率 (%) | 61% | 61% | 58% | 59% | 56% | 62% | 66% | 63% | 62% | 60% | 65% |
最大 勝トレード金額 | 327.86 | 334.22 | 381.97 | 341.23 | 342.21 | 371.21 | 275.66 | 311.74 | 428.95 | 268.69 | 222.72 |
最大 敗トレード金額 | -126.15 | -122.25 | -137.14 | -125.71 | -155.51 | -117.13 | -130.92 | -116.34 | -122.87 | -125.71 | -107.92 |
平均 勝トレード金額 | 66.741 | 66.9 | 76.38 | 72.59 | 71.8 | 70.48 | 67 | 58.78 | 70.44 | 64.8 | 48.24 |
平均 敗トレード金額 | -49.052 | -48.93 | -52.37 | -52.39 | -56.24 | -49.45 | -47.21 | -45.55 | -47.75 | -49.31 | -41.32 |
最大 連勝トレード数 | 6 | 8 | 4 | 5 | 7 | 5 | 6 | 6 | 5 | 5 | 9 |
最大 連敗トレード数 | 9.7 | 11 | 5 | 10 | 5 | 9 | 10 | 10 | 13 | 8 | 16 |
最大 連勝金額 | 522.701 | 839.54 | 590.25 | 606.29 | 487.08 | 408.8 | 813.5 | 418.81 | 462.42 | 343.33 | 256.99 |
最大 連敗金額 | -581.081 | -783.72 | -512.68 | -577.67 | -389.87 | -490.71 | -452.66 | -582.05 | -766.19 | -444.03 | -811.23 |
平均連勝 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 | 2 |
平均連敗 | 2.6 | 3 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 3 | 3 | 2 | 3 |
単純なコイントス手法と純益を比較すると、トムバッソの手法の純益が-1278ドルとなり、単純な手法よりも1078ドルも多くの損失を出していることがわかります。
よって、結果だけ見るとパフォーマンスは悪化しているといえます。
ただし、コイントス手法と比較して改善されている点もあります。
まず、平均のトレード金額を見てみます。
平均勝トレード金額が66.741、平均敗トレード金額が-49.052となり、単純な手法と比較してどちらも小さくなっています。
これをリスクリワード比でみてみると、単純な手法は約0.88、トムバッソの手法は1.36となり大きく改善しています。
また、最大トレード金額でみても、勝ちが327.86、負けが-126.15となり、単純な手法よりも勝ちが3倍ほど大きく、負けが僅かに小さくなっています。
これらはトレーリングストップの良い影響が出たと言えると思います。
逆にトレーリングストップの悪い影響が出ている部分もあります。
それが勝率です。
全体の勝率を見ると、39%と単純な手法の52%から13%も下がっています。
これはトレーリングストップを行うことでどんどんと損切り幅を価格に追従させていくため、
損切にかかりやすくなっていることを表していると思います。
改善された部分よりも勝率が大きく下がってしまったため、全体のパフォーマンスが下がってしまったのではないでしょうか。
FXでコイントス手法は勝てる?トムバッソのコイントス手法を徹底検証:まとめ
残念ながらトムバッソの手法は本にあるように勝てる手法ではありませんでした。
今回はFXのUSDJPYで検証を行ったので、少なくともUSDJPYの日足ではそのまま手法を適用しても勝てないということがわかりました。
ただ、単純なコイントス手法と比べて改善されている部分もあるため、もしかしたらパラメータを最適化すれば勝てるようになるかもしれません。
以下より今回の検証それぞれ10回分のレポートと検証に使用したEAをダウンロードできます。
興味のある方は是非、考察や追加で検証などを行ってみてください。
ATRCoinTossTrader
今回の記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
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